今年のクリスマス・・・・・・。

サンタクロースは、私の一番欲しいものをくれた・・・・。





涙が出るほど嬉しい私の一生の宝物・・・・・・・。











 
サンタがくれた宝物










12/24・・・・。

誰もが楽しみに待ち焦がれるクリスマスイヴ。



は、鼻歌を歌いながらケーキを焼いていた。

何年も同じ相手、景吾とクリスマスを一緒に過ごしてきても、楽しみなことに変わりは無い。

もちろん結婚しても変わらず・・・・・だ。



しかし今年は、今まで以上に景吾の帰りを待ちわびていた。




様!!お体に障ります!!どうかお休みになられていてください!!」

執事の後藤は、厨房でケーキを焼くを見つけると、顔を青ざめて慌てた。



「大丈夫よ、これくらい。後藤は大げさなんだから・・・・・。」

は青ざめる後藤に、困ったように微笑む。



「焼きあがりましたら、私が呼びますのでせめてその間だけでも座ってらして下さい!」


「はいはい・・・・。後藤を怒らせると怖いわね・・・・・・。」


「何をおっしゃいますか!様と景吾様のためです!!」


「は〜い。」



は素直に後藤に任せると、自室に戻りソファーに横になった。



は毎年、クリスマスになるとケーキとマドレーヌを焼く。

マドレーヌは、跡部の家に仕える者たちにラッピングして配られる。

さしずめからのクリスマスプレゼントなのだ。




そのため、クリスマスイブのは大忙し。

そんなを景吾も手伝う年もあるが、今年はあいにく仕事が入ってしまった。




景吾へのクリスマスプレゼントは、手編みの薄い水色のマフラー。

景吾がいない間に目を盗んで編み上げた。

はラッピングしたマフラーを手に取ると、一人赤面した。



(手編みのマフラーなんて恥ずかしい上に安っぽいけど、カシミヤなのよ!?)


つい恥ずかしさのあまり手に力がこもってしまい、手の中のラッピングが「くしゃ」と音を立てた。


「あばばばばばば!せっかくきれいにラッピングしたのに!!」

は慌てて、ラッピングを元どおり戻す。



元あった引き出しの中に隠すと、余ったカシミヤの毛糸が出てきた。

はカシミヤの感触に頬を緩める。



ふと、あることを思いついたは、再び毛糸を引っ張り出した。

ついでに、編み物の本も一緒だ。


熱心に編み物の本を調べ、マフラーは編み終えた筈なのに再び何かを編み始めた。






熱心に・・・・・・、幸せそうに・・・・・・・・・。











「・・・・。・・・・・・・おい、。」


優しく体を揺すられは目覚めた。




「・・・ん。・・・・・・・景吾。」


焼きあがったケーキにデコレーションし、再び編み物に夢中になっていた筈が、知らぬ間に眠ってしまったらしい。




「おかえりなさい、景吾。」

「あぁ。今、帰った。」


帰宅の挨拶と共に、軽く口づけを交わす。


景吾の視線がチラっと毛糸に向かう。

は慌てて、毛糸を閉まった。



「今年のクリスマスプレゼントは期待して良いよ?」

が得意満面で景吾に言った。


「ほう?それじゃ期待させてもらうぜ?ガッカリさせるなよ?」

「大丈夫!!景吾こそ!!私、期待してるからね?」

「俺様を誰だと思ってやがる。」


景吾の不遜な物言いには笑い声を上げた。



「では、まずは私のケーキをご賞味あれ!」

「あぁ。ディナーにしよう。」


二人そろって食堂に向かうと、そこには見事な七面鳥の丸焼きが飾られていた。


キャンドルの明かりが優しく食卓を彩る。

普段の食事は大きなシャンデリアに彩られ華やかな印象を受けるが、今日に限っては厳かだ。





景吾はグラスに注がれたシャンパン越しにを見た。

するとのグラスは、ミネラルウォーターのみを満たしていた。



にもシャンパンを。」


そう執事に告げると、執事は首を振った。

「いえ。様には、ミルクをお持ちしました。」

そう言い、白色の液体をグラスに注ぐ。



「ありがとう。」

は、礼を言うとミルクの入ったグラスを持ち上げた。



「ごめん。今日は、アルコールは遠慮させて?」

「あぁ、構わないが・・・・。体の調子が悪いのか?」

「・・・えっと・・・・。」

心配そうな景吾の言葉に、は言葉を詰まらせる。




執事の後藤が、さしでがましながら・・・・と言葉を続ける。

様は、作られたお菓子のリキュールに酔われ、少々ご気分が・・・・・。」



後藤の言葉に納得したのか、景吾は頷きシャンパングラスをあげた。

「そうか。無理はしなくて良い。・・・・乾杯。」

「乾杯。」

はホッとして、ミルクを一口飲んだ。


後藤に目で礼を言う。


(やっぱり後で、ゆっくり話したいしね・・・・・。)



シェフが切り分けた七面鳥は、焼き加減も味付けもとても美味だった。

食後にはが作った可愛らしいケーキも登場し、ゆったりとクリスマスの夜は更けていった。






部屋に戻り視線を交わす二人は・・・・・・・・・

甘い恋人同士と言うより、どちらがより相手を驚かせるか闘志を燃やす子どもの様だった。



「まずは、俺様からだ。・・・・・・・・・見ろ!!」

景吾が懐から取り出したのは、2枚のチケット。



の目が、チケットに釘付けになる・・・・・。

見る見るうちに見開かれる瞳と歓喜の表情。


「キャー!!今、来日してるSオーケストラのVIP席!!!!!
 2枚ってことは景吾も行けるの!?嬉しい〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「あぁ、明日は休みを取った。一緒に行けるぜ。」


「景吾、だ〜いすき!!!!」


は景吾に抱き着き、喜びを露わにした。

景吾はを片手で受け止め、してやったりと微笑んだ。



「どうだ?俺様の勝ちだろう?」

の反応に満足そうに微笑む景吾の言葉にはハッとした。



「まだ勝負は決まって無くってよ!!」

は、抱き着いていた景吾から離れると態勢を立て直した。


この二人は何の勝負をしてるやら・・・・・・・・。





「景吾、私からはこれ・・・・・。」

少し照れたような表情で、引き出しからラッピングされたマフラーを取り出す。



「ちょっと不恰好だけど・・・・・。手編みなの・・・・・・。」


「ほう・・・・、カシミヤか。ありがとな。明日から着けるぜ。」

触れただけでカシミヤの素材を見抜いた景吾は、マフラーに優しく口づけた。

少し照れたように、の心のこもったプレゼントに優しい瞳を返した。



「しかし・・・・・・お前、毛糸を握りながら寝てたから、間に合わなかったのかと思ったぜ?」

景吾は照れ隠しのように、帰宅時に見た寝ているを思い出し揶揄した。



「あ!あれは違うよ〜。」

「次はなんだ?セーターか?」

景吾は、次に自分に編まれるだろうものを予想してみた。



「景吾のじゃないもん。」


思いがけないの言葉に、景吾は動揺する。

あれは、薄水色の毛糸だったはず・・・・・と不審に思いながらも聞いてみる。



「・・・・・お前のか?」

「私でも無いよ?」


の言葉で、景吾の脳裏に第3者の影がチラついた。



「まさか・・・・・忍足・・・・あいつ・・・・!」

「違う違う!!侑士でも無いって!!氷帝メンバーじゃないよ!!」

「じゃ、誰だ?」


景吾でもでもなく、氷帝メンバーでも無い第3者・・・・・。

忍足である以上に不愉快な現実に景吾は眉音を寄せる。




「景吾はね〜、まだ会ったことない。私もまだ顔は見たこと無いなぁ。」

「・・・・・お前は顔も見たことの無い男のために・・・・・!」


は景吾の言葉を途中で遮り、重大な事実に気付いた。




「あ・・・・まだ男かも分からないんだった。
・・・・・でも何故か男な気がするんだよね。」

・・・・・?」


景吾は、ここで思考を止めた。




「というわけで、景吾。名前考えようね!!」


そう言って、はまだ膨らみも無い自分の腹部に手を添えた。




・・・・・・・、お前・・・・・子供が?」

「最高のプレゼントでしょ?・・・・・・私の勝ち?」






景吾は、言葉を発しなかった。

そして大きく身震いすると、を抱きしめた。




「あぁ!!負けてやる!!!」


負けを許さない王様が、負けを認めた瞬間だった。



はうっすら涙を浮かべると幸せそうに景吾の腕の中で微笑んだ。




今年のクリスマス・・・・・・。

サンタクロースは、私の一番欲しいものをくれた・・・・。





涙が出るほど嬉しい私の一生の宝物・・・・・・・。



でもサンタクロースは・・・・・








景吾だったのかもしれない・・・・・。









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