伝わらない体温
「ふっ・・・。うぅ・・・!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「兄さん!?」
アルフォンスはベッドの上で苦しむエドワードを見て驚愕した。
エドワードはびっしょりと汗をかきながらも、その瞳は閉じられていた。
「兄さん!起きて!!兄さん!!」
アルフォンスは悪夢で苦しむ兄を救おうとエドワードの体を揺すり起こそうとする。
「嫌だ・・・・。大佐、辞めて・・・・・・。」
(大佐・・・・・?まさか、マスタング大佐のこと?)
「兄さん!!!」
「・・・・・はっ!」
エドワードの瞳は開けられた。しかし、その表情は強張ったままだった。
「兄さん、大丈夫?うなされてたよ・・・・・。」
「・・・・・アル。」
エドワードはその視界にアルフォンスの姿を認め、ようやく安堵の表情を見せた。そして、甘えるようにしてエドワードはアルフォンスの冷たい体に抱きついた。
「嫌な夢を見ただけだ・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
アルフォンスには、それが嘘では無いが本当のことを言って無いとすぐに分かった。
いつだってエドワードはアルフォンスに隠し事をしようとする時、アルフォンスの顔を見ようとしないから・・・・・。
「アル・・・・・・。」
アルフォンスの腕の中でエドワードが顔を上げる。アルフォンスは、エドワードの顔が紅くそまっているのが暗闇でも分かった。少し怒ったようにアルフォンスの名前を呼ぶのは、キスをねだるときのエドワードの癖だった。
アルフォンスは鎧の口の辺りをエドワードの柔らかな唇にあてる。「きっとこれで、もう悪い夢は見ないよ。兄さん。」
「ん・・・。」
「兄さんが寝つくまで手を握っててあげるから、安心して寝なよ。」
「子供じゃねーんだぞ!!」
エドワードは照れ隠しのように怒ったが、アルフォンスの手をしっかりと握ったまま再びベッドに横たわる。
「おやすみ、兄さん。」
「おぅ。」
しばらくすると、安らかな寝息が部屋に響いてくる。今度は悪夢を見ずに済んだようだ。
アルフォンスは眠らない体で考える。エドワードがホテルに帰ってくるまでの時間に何があったのかを。マスタング大佐に会いに行った時間に何があったのかを・・・・・・・。
エドワードは、錬金術師としての研究の成果の中間報告としてロイ・マスタングのもとへやってきた。ロイは、この研究が国家を動かす重大なものであると考え人払いをし報告を聞いた。
「鋼の。探し物は見つかったか?」
「・・・・・まぁな。」
「見つけたのか!?
・・・・・・どうした?見つかったわりには、浮かない顔だな。」ロイは、エドワードの表情と報告内容の違いを不審に思った。
「・・・見つかったというか・・・・・・・・賢者の石の作成方法が分かったんだ。」
エドワードは、極めて淡々と義務のように報告する。
「・・・・・・・・・だけど、作るには多くの人間の命を犠牲にしなくてはいけない・・・・・。
そんなこと許されるはずが無い・・・・・・・・・。」ここまで無表情に報告をしていた顔が苦痛にゆがむ。
「けど、俺は!・・・・・・・俺は多くの人の命を犠牲にしてでも賢者の石が欲しいと思ってしまう。
早く、アルのために本物の体を取り戻させてやりたい!」エドワードの悲痛の叫びが、部屋にこだまする。
しかしロイは、エドワードの悲痛の叫びの本当の意味を・・・・本当の望みを見透かしていた。
「『自分の為に』・・・・・だろう?」
「!?」
思わず見上げたロイの冷たい眼差しにエドワードは怯む。
「お前は自分のために、弟の体を取り戻したいのだろう?」
「そ・・・んな・・・こと・・・。」
エドワードは動揺を隠せないまま、俯いた。
「鎧の体では無く、生身の体で触れ合いたいのだろう?」
「・・・違う!!」
「分かるさ。お前たちが不毛な恋愛ゴッコをしていることなど。・・・・・肉体が寂しいのか?それなら俺が相手をしてやろうか?」
ロイの信じられない言葉に、エドワードは返す言葉もなく目を見開いた。
エドワードとロイの視線が交差する。
ロイのエドワードを見つめる瞳には狂気が灯っていたのかもしれない。
静かにエドワードを追い詰めるロイ。エドワードは、ただ草食動物のようにジリジリと後ずさるしかなかった。
一方的で緩慢な追いかけっこは、エドワードの背が壁に辿り着いたところで終焉を見せた。
「・・・じょ、冗談だよな?・・・・笑えないぜ。」
ロイはエドワードが逃げられないように壁に手をつき、壁と自分との空間に閉じ込めてしまう。
尚も逃げようとエドワードはロイの懐から抜け出そうとする。そんなエドワードの両腕をロイはひとまとめにし、エドワードの頭上で押さえつけてしまう。
「冗談などでは無いさ。」
ロイはそう言って、エドワードの両腕を押さえつけている手と反対の手でエドワードの顎をつかむ。
エドワードのまだ幼い印象を残す顎をつかみ上げ、唇を自らのもので塞いでしまう。
驚愕に見開かれるエドワードの瞳。何が起きているのか理解するまでに時間がかかり、エドワードはロイの舌に進入を許してしまった。
ぬるりとした感触と共に差し込まれたロイの舌に上顎をなぞられる。鳥肌が立つような感覚を受け、エドワードは正気を取り戻した。
エドワードは思い切りロイの舌に噛みついた。
「つっ・・・・!」
ロイは痛みに顔をしかめエドワードの唇を開放した。
エドワードの口内に広がる鉄の匂い。エドワードは未だ両腕を拘束されたまま顔を背けロイの血を吐き出す。
「やってくれるな。鋼の。・・・・・唇は許さないというわけか。」
「・・・・・俺に触るな!」
エドワードは殺気のこもった瞳でロイを睨みつけた。
「生身の体を欲しているのだろう?・・・・・・遠慮するな。」
そう言うとロイ器用にエドワードのズボンのチャックを降ろす。目的のモノに触れる為の一切の邪魔な布を手際よく脱がせていく。
「やめろ!!」
エドワードの叫びは虚しく室内にこだまするのみだった。
ロイは目当てのモノを引きづり出すと、その眼差しや言葉とは正反対に優しく扱いた。
次第に硬く熱くなっていく自分の雄に、エドワードは信じられない気持ちでいた。
(好きでもない男に・・・・・・。)
悔しさで涙が溢れるが、泣くもんかと最後の意地で涙を零さない。
しかしロイの指がエドワードの蕾に指を入れた瞬間、エドワードの瞳から一筋の涙がこぼれた。
「いっ!!」
「後ろは初めてか?・・・・・くすっ。安心しろ。今日は指だけにしておいてやる。」
すでに勃起したエドワードの雫をすくい、後ろの蕾に塗る。すると、いくらかスムーズに指が入るようになった。
「ん・・・・・。いたいっ・・・・・。」
「まだ固いな。」
ロイはそう呟くと、錬金術を使ってエドワードの両手を壁に縫いつける。エドワード自身に錬金術が使え無いよう、もちろん両手のひらを合わせられないような位置にだ。
ロイはエドワードを押さえつけておく必要が無くなった為、自由になった両手でエドワードの上着のボタンを外していく。
露わになったピンク色の突起に唇を押しあてる。
「・・・・・・・あっ!・・・・んっ・・・・・・・。」
舌でつつくとそれは、みるみるうちに尖りを見せた。
「反応が早いな。弟に遊ばれていたか?」
エドワードは、その言葉に顔を背ける。
「なら、俺をお前の弟だと思えば良い。お前が恋しく思う弟のぬくもりの代わりをしてやるさ。」
ロイの言葉にエドワードの心は、張り裂けそうだった。
本当に欲しいものはアルフォンスの温もりだった。鎧の体になってしまう前の弾力も温かさもある弟の体に触りたかった。毎日じゃれあい、触れ合い、キスをした弟の体・・・・・。
ぬくもりを断たれ長い月日が経ってしまった。心が・・・・・体が・・・エドワードに限界を訴えていた。「ア・・・ル・・・?」
「そうだよ。兄さん。」
ロイはエドワードの呟きにアルフォンスを真似て返してやった。その表情はどこか悲しそうに見える。
「兄さん。」
ロイはエドワードを『兄さん』と呼び、愛撫を再開させた。
すっと顔を下に降ろし、エドワードの立ち上がった雄を口に含む。
「・・・・んあぁっ!」
エドワードの口から今までとは違う快感の声が発せられる。
ロイの口内は温かかった。ぬるぬるとした舌がエドワードの雄にからみつく。雄の先端部分から溢れる雫をチロチロと舐め取れば、エドワードの雄は更に雫を零した。「んんんん〜。きも・・ち良いよぅ。アル〜。」
エドワードの頭の中にロイ・マスタングはもはや存在しなかった。代わりに存在するのは、生身の体を持つかつての弟・アルフォンスだった。
ロイは巧みに前を攻めつつ、後ろの蕾への進入も再開した。さっきまでとは違い、だんだんと柔らかくなっていく。
「はぁ・・・ん。んっんんんん。」
グニグニと円を描くように中をさすると、吸い付くように中が蠢く。ある1点をさするとビクンとエドワードの体は跳ねた。
「あっ!!・・・・そこダメ・・・・・。なんか・・・・変・・・・・だ。」
「大丈夫。ここが兄さんの良いとこなんだよ。」
執拗にその1点をロイはさすった。指を2本に増やすとエドワードの膨らみは更に大きくなった。
「あぁぁぁぁぁっ!!・・・・・もっ、イッちゃう!」
ロイは口に含んだモノを勢いよく吸った。
「はぁぁぁぁぁあああああああああ・・・・・!!」
ロイの口の中で勢いよく溢れる精液をロイはためらい無く嚥下した。
「も・・・離せよ・・・。」
ロイはエドワードが射精した後もそれを口から離そうとはしなかった。
「ん・・・んんんぅ。も・・・出ない・・・ってば・・・。」
射精した後でもまだ硬さを残すエドワードの雄をロイはなおもしゃぶり続ける。
「ダメ!・・・アル!!・・・・んんんんんんんんんんぅ〜っ!!!」
もう出ないと思われた雄が再び蜜を吐き出す。最後の1滴まで吸い尽くしエドワードの雄が軟らかさを取り戻した頃、ようやくロイはエドワードを解放した。
ロイは、エドワードの両腕の拘束を解くと一瞥もくれずに部屋を後にした。
残されたエドワードは自分の罪深さにただ涙し、ホテルに残してきた冷たい体のアルフォンスを想った・・・・・。