翌日、陽も大分昇ってから、飛行船は静かに目的地へ到着した。


「ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。
 ここが三次試験のスタート地点になります。
 さて試験内容ですが、試験官の伝言です。

『生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間。』」






第三次試験  参加人数 40名









   Blood・8









タワーの側面は窓一つなく、足場になりそうなとっかかりもない。
地上から何kmも離れたタワーの最上部は、落ちただけで命が無いことを物語っていた。

外壁を伝って降りることは自殺行為と判断する受験者の中、自称・一流ロッククライマーの男が僅かなとっかかりを頼りに下っていった。
しかし、その判断は失敗だった。すぐに怪鳥に狙い撃ちにされ、彼の姿は再び見ることは無かった。

受験生たちは外壁を伝って降りることよりも、下へと続く隠し扉の存在を確信し探し始めた。




は、歩きながら足裏に響く感触で下へと続く扉を探した。

しかし、視線は301番のギタラクルを探してしまう。



(あの人には、助けられてばかり・・・・・・。)



他人に助けられたり、庇われたりすることを許すような性格では無い筈、とは不思議に思う。

しかし、ギタラクルの存在に心のどこかで甘えてしまっている。




(彼を・・・・・好きになったから?)



の視線の先でギタラクルが、振り返る。

その途端赤くなる顔をパッと背け、は視線を地面に落とした。




(やば・・・・、思い切り不自然だ、私・・・・。)



甘えたくなるほど心を許しているのに、妙に気まずい・・・・。

それが、今ののギタラクルに対する心情だった。




恐る恐る視線を戻すと、そこには既にギタラクルの姿は無かった。


(あ・・・!?)


は急いで、ギタラクルがいた位置に駆け寄る。


(隠し扉で、先に行かれちゃった・・・・か。)


は、消沈とも安堵とも取れない溜息を一つ吐くと歩き出す。


2〜3歩も歩かないうちに、足裏は空洞を察知する。




(私もそろそろ行こうかな・・・・。)


体重を掛けて、隠し扉を開ける。




「あ」


背後でキルアの声がして、は思わず振り返った。



キルアとゴンが指をさして、を見つめていた。

が微笑んで手を振ると、隠し扉はそのまま閉まりを隠してしまった。



後には、ゴンとキルアがどんなに試してみても、その扉が再び開くことは無かった。





隠し扉の重力に従って着地したは、その部屋の先客を見た途端に声を洩らした。


「あ・・・・。」


カタカタカタと震える顔が、を見つめる。

そう、扉の上で見失ったはずのギタラクルが・・・・。




は困ったように視線を伏せると、上目遣いでギタラクルを見つめ挨拶をした。


「・・・こんにちは。」



その姿は百発百中で男を落とす仕草だが、に自覚は無い。



ギタラクルはカタカタカタと震えたまま、一つ大きく頷いた。
挨拶のつもりなのだろう。




それ以上の会話は続くことが無く、気まずい沈黙が部屋を覆いつくす。


沈黙は新たな来客によって、破られた。





― ガタッ





246番のプレートをつけた女の子。

大きな丸い帽子が印象的だ。





(大きな帽子が魅力的だけど・・・・・十中八句、あそこに武器が仕込まれてるでしょうね。)


は大きな瞳を細めて、246番の帽子を見た。




「どうも。」

246番はに見られていることに気付き、言葉を発した。




は、少し頭を下げて会釈する形をとった。

は本来、初対面の人間と気軽に話をするような性格では無い。





しばらくすると、立て続けに仕掛け扉が開いた。




― ガタッ
― ガタッ



78番のパンチパーマ風の親父と、79番のスキンヘッドだ。


二人はたち先客を一瞥すると、言葉もなく視線を逸らした。





10分程経ったところで、ふたたび仕掛け扉が開いた。




― ガタッ



159番のプレートをつけた、ヘアバンドをした若い男だ。

159番はと246番を見ると、満面の笑みを浮かべた。




159番は、246番に歩み寄った。

「こんにちは。」



246番は、少し戸惑った様子ながらも159番に答えた。

「こんにちは。」



「俺、ザイルって言うんだけど。君は?」

「・・・・・・、ポンズよ。」

「うっそ!名前まで可愛いね!!!」

「はぁ・・・・。」

「いやいや、ナンパじゃないから!!試験中にナンパとかしないっしょ!?」

「はぁ・・・。」





これで部屋の中は6人になった。






≪  ピー・・・・・  ≫




機械的な音が、の耳に木霊する。

聞き覚えのある音には一つの単語を思い浮かべる。


( A ・・・・ラの音・・・・。調律・・・チューニング・・・・・。)



――  パッ  



突然音も無く、部屋は暗闇に包まれた。


は、冷静に視界を閉じる。





≪ ここは、『暗闇の道』だ。 ≫


部屋にアナウンスが流れた。


≪ 君たち6人はここから、ある法則を見つけ正しき道を選びゴールに辿り着かなくてはならない。
  なおゴールした順番は、次の試験に関係する。
  それでは、諸君らの健闘を祈る!! ≫





「うぇ〜、本当に見えねぇや。ポンズちゃん、大丈夫?」

159番、ザイルの声が響いた。


「え、えぇ。」

ポンズの声がそれに応える。




ふとの掌にザイルの手が重なった。

「!?・・・・・・何?」


は、手を振り払ってザイルを睨む。




「おっと!ポンズちゃんと間違えちゃった!!悪ぃ悪ぃ!」

ザイルは、悪びれた様子も無く謝った。




ザイルのナンパの本命は、実はである。

ポンズにばかり構うことで、にヤキモチを焼かせる魂胆だ。


(この手のプライドの高い女は、最初は無視が効くんだよな。)



「ポンズちゃん、怖いだろ?俺が一緒にいてやるよ〜ん。」


(ポンズちゃんも可愛いけど、やっぱ100番の女は別格だぜ。)



ザイルの手が暗闇でに触れようとする。




(殺してやろうか・・・・・。)



が殺気を出した時、大きな音とともに扉が開いた。








――  ゴゴォオオオオオオオ








6人は、扉の開いた新たな部屋へと足を踏み入れた。



部屋に入ると、再び音が聞こえてきた。

パイプオルガンのような重い神秘的な音。



は、最初の部屋で聞いた機械音を思い出した。


(あれはA・・・・つまり ラ の音だった。
 楽器の調律をする時、常にAの音は基準にされる。
 調律と思ったのは、Aの音だったから。・・・・・つまり、さっきのAの音を基音にした場合・・・・。)




は耳をすませる。






(下からド・ミ・ド・ソ。つまり、ハ長調のTの和音。コードで言うとC。
 これが、何に関係するか・・・・。)








6人は思い思いに、部屋を歩き回った。

部屋は10畳程の広さを持った正方形で、窓は存在しないため一切の光を遮断していた。



入ってきた扉とは別に2つの扉が、存在した。

2つの扉は隣合わせに置かれ、外観は触った感じでは全く同じもののようだった。




「先に進むしか無いだろう。」

78番が言う。



全員一致で右の扉を開ける。

扉は重く分厚く、防音を施されているようだった。



右の扉を開けると、長い廊下が続いていた。

そして再び、和音。




(ファ ラ ファ ド・・・・Wの和音。Fのコード。)



扉を開ける毎に、音は違う音色を表していた。







1時間ほど長い廊下を迷路のように彷徨い歩くと、一つの部屋に到着した。

扉を開けて、中の様子を伺う。



78番は自分に自信があるのだろう、儔著無く入室した。

も78番に続いて入室した。



その時!!



体を赤外線が感知するのが分かった。

天井から気配。


は、入ってきた扉に瞬時に戻り廊下へ出た。







――― ゴォゥゥウウゥウ!!!!!



火炎放射器が、78番の体を焼いた。



「うわぁああああああああああああああ!!!!!!!」



たんぱく質が焦げる、独特の臭いが周囲にたちこめる。



助けに行く者は、もちろんいなかった。





静かに扉を閉めて、再び長い廊下を戻る。

失敗すれば死ぬ・・・・それだけのことだった。






再び「C」のコードの鳴る部屋に戻り、左の扉を開け歩き出す。




(ファ ラ ド ファ ・・・Wの和音。コードはF。
 ・・・・・・・配列が違うだけで、同じ和音?)



右の扉を開けた時と同様に、廊下には和音が響いていた。

迷路のような廊下を30分程、歩くと再び扉が現れた。




扉を開き、慎重に中の様子を伺う。


誰も一番に入室する気が無さそうなので、が足を踏み入れようとした。

その時・・・



「待って。」




ポンズが、を引き止めた。




「皆、動かないでね。」



ポンズは、帽子を人差し指で弾いた。

ブーンと羽音が木霊する。

暗くて確認できないが、何か虫を操っているようだった。




(なるほど。虫を先に入室させて、罠が無いか調べるわけね。)





「多分。大丈夫。」



羽音が鳴り止む。


5人はそのまま、部屋に入った。






ポンズの言った通り、特に罠は無いようだった。



は周囲を注意深く見回した。


首をぐるりと回し、天井を見上げるとそこに奇妙な数式が書かれていた。



「あ。」




天上には蛍光塗料で、「▲−△=7」と書かれていた。




「う〜ん、さっぱり分からない・・・・。」




他のメンバーも天井を眺めて、なにやらブツブツ考えたりしている。

はひとり、次の部屋へ続く廊下に耳を澄ました。




左の廊下から・・・・・[ラ ド ミ ド]・・・・Yの和音、Am
右の廊下から・・・・・[レ ラ レ ファ]・・・Uの和音、Dm








考え込むの体に、ザイルの腕が絡みつこうとした・・・・・その瞬間



「いててててて・・・!!」


ギタラクルがザイルの腕をねじる。



「だ、誰だよ!・・・・ひぃっ!!!!」



― カシャン



ザイルの顔から、悲鳴とともに暗視眼鏡が落ちた。

ザイルは暗視眼鏡によって、に近づき何度もセクハラをしようとしていたのである。






ギタラクルはカタカタと揺れたまま、凄い力でザイルの腕を締め上げる。



「やめろ!やめてくれ!!人違いしただけだろ!!!」



ギタラクルは、一瞬迷った後に手を離した。




「ちくしょ・・・・・。行こうぜ、ポンズちゃん!」

「え・・・、ちょ・・・・・。待ってよ!」


ザイルは、今度こそポンズの腕を掴んで右の扉を開け先へ進んでしまった。




は一つ溜息を吐くと、ギタラクルを見つめた。





(もしかして助けてくれた・・・?)









カノンは期待に胸が熱くなったが、何も言うことが出来なかった。







ザイルとポンズが行った右の扉に目を向けると、再び長い廊下が続いていた。

残った4人は、仕方なく右の廊下へ続いた。





今回の廊下は、トラップだらけだった。

古典的な落とし穴や、降ってくる天井、槍などをかわしながら次の部屋を目指す。



40分ほど経って、次の部屋に辿り着いた。

先にザイルとポンズは、入室し部屋を探索しているようだ。




「今度は何も書かれてないのよ。」


後から来たたちにポンズが訴える。



5人は手探りで部屋中を探し回る。






は部屋の四隅を調べていて、一箇所穴が開いていることに気付いた。

恐る恐る手を入れてみる。



(虫とか鼠とかいませんように・・・・・。)




すると指先が何かに触れた。

固い触感から生き物では無いようだ。


しっかりと掴み、穴から出すとそれは四角い箱だった。




「こんなものが出てきたけど・・・・。」




は4人に伝えた。





「それは何かしら?」

「う〜ん・・・・。」


しかし、いくら探してもそれ以外に出てこなかったので、5人は箱を持って先に進むことにした。






左の廊下から・・・・・[ファ ラ ド ファ]・・・Wの和音、F
右の廊下から・・・・・[ソ シ レ ソ]・・・Xの和音、G



79番が左の廊下を指して言う。


「この音、前の部屋でも聞いた気がするぞ!」


「確かに同じ和音、同じ配列ね・・・。」

は79番に同意した。




「よし!左だ!!」

79番は一人、確信を持つと我先にと進んだ。



(同じだから、正解の道とは限らないのに・・・・。)



はそう思ったが、口には出さず後に続いた。





5人は地雷吐きの廊下を走りぬけた。


そして20分走ったところで、次の部屋は現れた。




ポンズが蜂を使って、部屋の罠を調べる。

「特に罠は作動しないわ。」



ポンズの言葉で79番が喜び勇んで部屋に駆け入った。

「ほら見ろ!俺が言った道が正しかった!!」




79番に続いてポンズが、入室しようとする。

が、はポンズの腕を掴んで引き止めた。



「え!?」



(なんだか薬品臭い・・・・・。)




ポンズが振り返るのと、79番が部屋の中央に辿り着くのは同時だった。


その瞬間・・・・





――――― バシャーーー!!!!





「うわっ!!なんだ・・・?・・・・水?・・・・・う・・・・痛い・・・・・
 ひぃーーーーーーーーーーーーーーー、痛いーーーーーーーーー!!!!!!」



79番の男の叫び声が、部屋に響く。

暗闇の中、何が起きているのか分からないが、恐らく人体に影響がある薬品を浴びたのだろう。

79番の声は、次第に小さくなり終いには何も聞こえなくなった。





4人は、再び廊下を戻った。


「あの・・・、ありがとう。」

ポンズは前を走るに礼を言った。




は走ったまま、応える。


「別に・・・・。あなたの能力は、これから先もあると便利そうだから。」


「でも、私の蜂が部屋に入っても罠は作動しなかったのに・・・・。」


「・・・・。79番が部屋の中央に来て、罠は作動した。
 多分・・・・、中央に重さを感知して作動する感知器があったんだと思うわ。」


「なるほど・・・・・・。」





4人は元の部屋に戻り、右の廊下[ソ シ レ ソ]Xの和音、Gを選び直した。



地雷の廊下を20分走りぬくと、再び次の部屋が現れた。




念のため、蜂で部屋の罠を調べ部屋に入室する。

もちろん、罠は作動しなかった。






部屋の中央にはピアノが置かれていた。


楽譜が下方に置かれたスポットライトにより、僅かな光で浮かび上がっている。


 




そして鍵盤には、落書きがしてあった。



 

 

「■▲− ×○△÷ ×★▼=056
 これは・・・長いなぁ・・・・・。」

ザイルが、うんざりした声で呟く。





(楽譜にも意味があるはず・・・・・。)





は楽譜に書いてある音階を弾いてみた。

すると・・・・・・。



指で押されていない鍵盤が一つの数式を導いた。


『▲ − △ × ▼ = 0』




「おぉおおお!」

「なるほど!!」


ザイルとポンズが、声をあげる。





は、ピアノに触れながら今まで通ってきた部屋の和音を弾いた。



最初はC[ド ミ ド ソ]
そしてF[ファ ラ ド ファ]
次にDm[レ ラ レ ファ]
そしてこの部屋G[ソ シ レ ソ]






の頭の中を罠にかかった道の音、正しい道の音が交錯する。






「なるほど・・・・・・。やっぱり、そういうことか。」





の独り言を聞いて、ポンズが尋ねた。

「何か分かったの?」




は不敵に笑うと、ポンズに説明を始めた。




「正しい道を選ぶ法則が分かったわ。」

「「え!?」」


ザイルも振り返り、を見た。




「簡単に言えば、音楽理論よ。
音楽は一見なんの法則も無いように聞こえるだろうけど、してはいけない禁則事項もあるの。
その音楽理論に基づいて説明すると・・・・・・



まず、最初の部屋。C[ド ミ ド ソ]の和音が聞こえたわ。
そこからF[ファ ラ ファ ド]かF[ファ ラ ド ファ]のどちらかを選ぶ。
これは同じ和音でも構成されている音の配列が違う。
ドミドソからファラファドは、連続5度という禁則事項に触れるの。

そしてFからAm[ラ ド ミ ド]かDm[レ ラ レ ファ]という選択。
これはハ長調でWの和音であるFから、YであるAmに進行することの禁止。


そしてDmからF[ファ ラ ド ファ]かG[ソ シ レ ソ]という選択。
UであるDmから、WであるFの進行の禁止よ。」




「へ・・・・へぇ〜。俺には今いち分からん・・・・・。」

ザイルは冷や汗を流しながら、の説明の理解を放棄した。






「まぁ、要は聞いた時により良く聞こえるための法則だけどね。」

が一般人に分かりやすいように、噛み砕いた。




ポンズは分かっているのか、分かっていないのか顎に手を当て考えている。

「あの。FからDmに行けても、DmからFには行っては駄目なの?」



ポンズの質問には頷いた。

「そうよ。WからUは許されても、UからWは許されないの。」

「はぁ・・・・・。」




ザイルとポンズは、難しい顔をしたまま次の部屋へ続く扉を開く。




左の廊下から・・・・・[ラ ラ ド ミ]・・・Yの和音、Am
右の廊下から・・・・・[ラ ド ド ミ]・・・Yの和音、Am





ポンズとザイルは、眉間に皺を寄せてを振り返った。







は説明しながら、右の廊下を進んで行った。


「Gに含まれる シ の音は導音で次はドに進行する法則。・・・つまり右。」





慌ててポンズとザイルは、の後を追う。

4人は右の廊下を進んで行った。






――― ガラガラガラ・・・・・


大きな音に振り返る。



「これはまた古典的な・・・・。」

が、ひとり感想を述べる。



「落ち着いてる場合じゃないわよー!!」

「走れー!!!」


来た道がどんどんと崩れ去る。

崩れ去るスピードは、どんどん速くなり4人のすぐ後ろまで来ていた。




4人は走り続けた。


1時間後・・・・・。



罠を確認する余裕も無く、扉を開けて部屋に滑りこんだ。




「「ハァハァハァハァハァハァ・・・・・。」」

息の上がるポンズとザイル。

二人を見下ろすとギタラクルは、息一つ乱してはいなかった。




早速、部屋を探し回る。

それはすぐに見つかった。


「絵か何かが飾られてる。」

が3人へ言った。



「何も書かれて無いぜ。白紙だ。」

暗視眼鏡を掛けたザイルが言った。


「「・・・・・・・・。」」


4人は絵画をくまなく調べたが、特に仕掛けも無く、諦めて部屋を後にすることにした。





そして再び音楽テスト。


左の廊下から・・・・・[レ ラ ファ レ]・・・Uの和音、Dm
右の廊下から・・・・・[ド ソ ミ ド]・・・Tの和音、C



「この部屋はYの和音。Yの次にTに進行するのは禁止。だから左。」

はそう言って、再びスタスタと左の廊下を歩き出した。





その廊下は、何故か何も罠が無かった。

不審に感じながらも10分で次の部屋へと辿り着いた。




(間違えた・・・・・?そんな筈無いけど・・・・。)



ポンズの蜂で、念のため部屋の罠を調べる。

変わった様子は無く、恐る恐る入室しても罠は作動しなかった。



しかし、部屋に扉は存在しなかった。

4人は壁を調べ歩き回る。



『コンコン・・・』

物音に歩み寄ると、ギタラクルが引き戸を見つけていた。



「金庫・・・・・。」

引き戸の中には、金庫が存在した。



金庫には3桁のナンバーロックと鍵が掛かっていた。

そして発光ペンで書いてあるメモが貼られている。


 ▲ ▼ □ 








「あ!何か書いてある!!」


金庫の発見に駆け寄ってきたポンズが叫ぶ。


引き戸の内側に発光ペンで書かれた文字。


『 √△ = △ > 0 』





「つまり△=1ね。」

ポンズは、そう言って今までの部屋のヒントを思い出した。



「最初の部屋の▲−△=7から ▲=8。
 次の部屋は・・・・・・。」



「これよ。」

は、持っていた四角い箱を取り出した。




「それは何かしら?」

ポンズが首を傾げる。




も困って、箱を振ってみた。

小さくカツンと音が鳴った。



がしげしげと、箱を暗闇の中で見つめていると・・・・

不意に箱を取り上げられた。

ギタラクルだった。



ギタラクルは、箱を眺めたあと左右に捻った。

すると箱は割れ、中からチャリンと金属が落ちる音がした。



「あ。」



ポンズが慌てて、床を手探り拾い上げる。



「鍵よ。この金庫の鍵かしら?」






そして割れた箱の中身をギタラクルが、に見せた。

発光ペンで『 4 』と書かれていた。



「つまり・・・・・・□=4。」




▲=8、□=4




ザイルは叫ぶ。




「そんでピアノの部屋が▲−△×▼=0だったから!!」

ザイルが、ナンバーを入力する。





≪ピッ・・・ピッ・・ピッ≫



「ポンズちゃん、鍵お願い。」

ザイルが鍵を持つポンズに、委ねる。


ポンズはザイルと入れ替わるように金庫の前へ立ち、鍵を入れる。

「OK。・・・・あれ、ここの数字って・・・・・



キャーーーーーーーーーー!!!」



ポンズが鍵を回した瞬間、床は落とし穴のように開きポンズを飲み込んだ。



「ポンズちゃん!!!!」
「ポンズ!?」



穴はポンズを飲み込むと再び閉じ、押しても叩いても開くことは無かった・・・・・。









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※管理人から
長すぎて、2つに分けました。
トラップについて疑問やおかしいんじゃないの!?という意見ありましたらお聞かせください。
続き、お待たせしました!!